パーソナリティ障害のカウンセリング(2)

パーソナリティ障害のカウンセリングは,前回書いたような「自我」と呼ばれる心の枠組みの脆弱さを支えながら,ある種の形成不全を再形成するようにアプローチします。その過程は「育て直し」とも呼ばれ,年単位のカウンセリングの継続が必要になります。

境界性パーソナリティ障害の場合,対人関係における理想化とその失望による全否定という極端さがあり,0か100かという認知の仕方が強いので,話を聴きながらその間の10とか90などにとどまれるように一緒に見ていきます。「自我」の水準というのは,葛藤を抱えられるかどうかがひとつの基準ですので,好きと嫌いといった反対の感情等が混在できるように進めていきます。

自己愛性パーソナリティ障害の場合,対人関係において理想化が相手ではなく自分に向いています。自分自身の理想化に対して,葛藤を抱えることができないため,その理想化を脅かす相手に対して否定したり排除したりします。葛藤を抱えられるようにする方向性は,境界性と同じですが,自分自身への失望を抱えることになるため,それをもたらすセラピストを排除したくなりがちです。

パーソナリティ障害は,乳幼児ぐらいの小さい頃のトラウマ的な親子関係が背景にあることが多く,深い心の傷つきを抱えていると言えます。上記のようなアプローチは「介入」に当たりますが,その前提として安定した関係性を継続的に築くことが重要です。