うつ病を深層心理学的にみる(3)

うつ病の背景に,「怒り」などのネガティヴな感情があって「抑圧」されている場合に,無意識下にある「怒り」に気づくというのは,基本的な深層心理学的アプローチです。もうひとつ,「抑圧」が何を守ろうとしているのかも重要なポイントになります。

古典的な精神分析では,「抑圧」されたネガティヴな感情に気づくことによって,症状が緩和あるいは消失するというのが,基本的な考え方です。カウンセリングを通して,「怒り」などのネガティヴな感情が,セラピストとの信頼関係に基づく安全安心な場で表出され,否定や批判されずその状況での自然な感情として受けとめられる体験は,大きな癒しにつながっていきます。

ただ,それだけでは「抑圧」という防衛機制の働きは,多くの場合そのままです。このため,再び同じような状況におかれたとき,そのネガティヴな感情を同じように「抑圧」してしまいます。前回も書いたように,防衛機制はその人の心を守る働きでもあります。「抑圧」があなたの何を守ってきたのかに気づくことは,あなたの心の奥の大切にしたい何かに気づくことにつながります。

何を守ろうとしてどんな「抑圧」の仕方をするかは,ある種の生きていくための方略です。その人が生きてきた歴史が,防衛機制による無意識的な心の働きにも表れています。それに気づくことで,もっと柔軟にあなたの大切な何かを守る方略が見つかります。