双極性障害を深層心理学的にみる(5)

前回,双極性障害における「ハイドリーム」と「ロードリーム」について書きましたが,両方に「自己愛」が関連していると言えます。「自己愛」の揺れが,気分の波と連動していくので,健全な「自己愛」を育むことがカウンセリングでも重要になります。

「自己愛」という言葉から,自己愛性パーソナリティ障害を想起される方もいらっしゃると思いますが,パーソナリティ障害を意味しているのではなく,自分で自分の価値を認められる自信のような感覚だと思ってください。「自己愛」の傷つきがあると,双極性の気分の波は共通してみられるので,「自己愛性」「境界性」などのパーソナリティ障害にも関連する内容ではあるのですが。

「自己愛」の傷つきは「ロードリーム」に反映されるので,うつ状態の極の時期には,「自己愛」のどういう側面に傷つきがあるのかを「ロードリーム」に見出していくことが,その傷つきを癒し抑うつの症状を軽減することに役立ちます。傷つきの傾向を知ることで,その傷が刺激されないようにする「守り」が心の中につくられることで,気分の波を安定させる予防にもつながります。

「自己愛」の傷つきが深いほど「ハイドリーム」に逃げ込みたくなり,気分の波は不安定になるので,「ロードリーム」から気づく「守り」と,前回書いた「ハイドリーム」から気づく自己イメージを生きる方向性が,カウンセリングの両輪になっていきます。