パーソナリティ障害のカウンセリング(1)

パワハラ等のハラスメントにおいては,加害者側にパーソナリティ障害かそれに類する要因が考えられることが多いのですが,パーソナリティ障害をもつには,幼少時の家庭環境の問題が強く影響しているため,継続的なカウンセリングが必要と考えられます。

ここでは,境界性/自己愛性パーソナリティ障害について書きますが,一部を除いてパーソナリティ障害の人が自らカウンセリングに訪れることは少なく,何かトラブルが起こって周囲の人が困って行かされる形になることも多くあります。加えて,前回書いたような心の枠組みの脆弱さから内省力が弱く,来談を継続する動機にも乏しいので,中断事例も多く報告されているのが実情です。

このため,カウンセリングでは深層心理学で「自我」と呼ばれる,心の枠組みを少しずつ取り戻していくことが中心になります。そのためには,脆弱な心の枠組みを補う外側の枠組みが必要で,カウンセリングの時間や場所といった枠組みを守れるようにし,必要に応じてそこからの逸脱行動について,ルール作りをするということを,言葉の説明を含めて丁寧に進めていくことが重要です。

クライエント本人は,無意識レベルでセラピストから無条件の承認を得ようとするので,そういった枠組みに抵抗を示しますが,その枠組みの中でセラピストが「無条件の肯定的配慮」と呼ばれる関わりを続け,安定した関係性を築いていくことが不可欠です。