うつ病を深層心理学的にみる(5)

前回,トラウマ的な体験による自分自身への「怒り」が,「解離」という防衛機制につながると書きましたが,「解離」が起きると「怒り」が切り離されたようになり,他の理不尽な場面でも「怒り」を感じることができなくなっていることが多くあります。

アレキシサイミア(失感情症)という状態像がありますが,「解離」との関連性が指摘されています。アレキシサイミアも,感情を感じられなくなっている点では共通していて,感情を「解離」させるようなトラウマ的な体験が背景にある可能性が高いと言えます。うつ病における「怒り」や,その引き金になった「悲しみ」「後悔」といった感情も,同様に「解離」されることがあります。

アレキシサイミア(失感情症)傾向の人が,心身症と呼ばれる様々な身体症状を訴えることは典型的とも言えますが,「仮面うつ病」と呼ばれる,抑うつ症状よりも身体症状を主訴として医療機関を受診するタイプのうつ病も,共通点が多いのが特徴です。いずれにしても,感情に対して「解離」を用いるというパターンを変えていくことが,カウンセリングの中長期的な目標になります。

「解離」といっても様々ですが,トラウマ的な体験が背景にあるため,薬物療法やカウンセリングで症状が緩和されても,対症療法にしかなりません。根本的には,トラウマ的な傷つきが癒されるような,継続的な心理療法のアプローチが重要なのです。