パーソナリティ障害のカウンセリング(3)

パーソナリティ障害は,深層心理学でいう「自我」の脆弱さが共通していますが,「自我」の再形成が始まると,少しずつ葛藤を抱えられるようになります。葛藤を抱えられることにより,抑うつ感が強くなるのですが,カウンセリングとしては順調な過程です。

境界性パーソナリティ障害の場合,対人関係における相手の理想化の失望という葛藤を抱えられるようになることがひとつの目標です。失望を抱えることは,相手に向けていた「怒り」を自分の中にとどめることでもあります。無意識に自分本位な理想化イメージを相手に押しつけて,失望から相手を傷つけたという「罪悪感」が生まれますが,それを一緒に抱えるように関わっていきます。

自己愛性パーソナリティ障害の場合,自分自身に対する理想化の失望という葛藤を抱えられるようになることがひとつの目標です。この場合,自分自身に対する失望を,「怒り」として自分の中にとどめることになりますので,非常に強い抵抗を示します。自分に対する失望を抱えることで「責任感」が生まれてくるので,その人格的成長に対して一緒に認められるように関わっていきます。

この段階での抑うつ感は,幼少時のトラウマ的な体験とつながっているので,セラピストとの関係性が不安定になり中断になることもあります。セラピストとしては,そのトラウマ的な傷つきをいたわるように存在し続ける「器」になることが重要と言えます。