うつ病を深層心理学的にみる(1)

うつ病といわれる状態を深層心理学的にはどのようにみるか,という話題ですが,割と典型的には「攻撃性」が関連してきます。うつ病は,「攻撃性」が自分に向かっているために,心を傷つけて心のエネルギーが枯渇してしまった状態と言えます。

「攻撃性」というのは英語"aggression"の訳語ですが,深層心理学的には転じて「積極性」にもつながります。例えば,「怒り」をエネルギーに転換するような形で,「昇華」と呼ばれる防衛機制が働くと,「攻撃性」も転じて精力的な活動などにつながります。ただ,「怒り」のような感情は,社会的に表現することが適切とされない場面が多く,「抑圧」されやすい感情です。

「抑圧」された「攻撃性」は,自分の外側より内側に向いてしまい,自分自身の攻撃に向かい,心を傷つけていきます。抑うつ状態に陥るとき,「内なる批判者」と呼ばれるものと深層心理的ワークで対峙する必要が出てくる場合も多くあります。「攻撃性」に気づきを向けられずに重症化すると,うつ病の症状としての妄想である「罪業妄想」「卑小妄想」などにまで膨らんでしまいます。

「攻撃性」を喚起する感情は,「怒り」であることが多く,どのような「怒り」を「抑圧」してしまったかに気づいていくことが重要になります。ただ,無意識下に入っていて見えづらいため,「内なる批判者」に焦点づけたワークが有効に働くことも多いです。