双極性障害を深層心理学的にみる(2)

双極性障害は,躁うつ病とも呼ばれますが,気分の波があり,上がったときが躁状態,下がったときがうつ状態となります。躁状態の方が,思考や行動面の逸脱はあるものの,気持ちも高まり元気なので,躁状態の方に健康な自分の基準を置きやすくなります。

躁状態に健康な自分の基準を置くと,うつ状態は病的な自分と感じることになりますが,こうなるとうつ状態だけが注目されるため,「うつ病」と間違いやすくなります。双極性障害は,気分の波が不安定になることが中核的な症状なので,躁状態もうつ状態も自分の気分の波の中にあることを俯瞰するように,波の振幅の中心に自分の基準を置けるようになることが,とても重要です。

とはいえ,うつ状態の方に落ちていくような方向の波のときは苦しく,不安や恐怖が伴いますから,早く抜け出したいと思うのも無理もないことです。「否認」という防衛機制が働くのも,そういう自分を見たくない,それが自分の一部だと認めたくないための反応です。すると,何とか気分を落とさないようにとエネルギーを使ってしまい,安定のためのエネルギーが失われてしまいます。

多くの人が,この悪循環に陥って気分を安定させる方向に心のエネルギーを使えず,悪化させてしまいます。カウンセリングでは,うつ状態に落ちる不安や恐怖を受けとめながら緩和し,全体の気分の波の乱れを安定させるようにアプローチしていきます。