パーソナリティ障害と双極性障害(1)

双極性障害(特にⅡ型)のような気分の浮き沈みが見られる人の中に,パーソナリティ障害と思われる人が一定の割合で含まれます。パーソナリティ障害が基礎にあって,症状として双極的な気分の波が生じているので,カウンセリングの方向性も異なります。

パーソナリティ障害というのは,大まかに書くと,主に環境的要因(家族関係など)を背景に健常なパーソナリティ(人格)形成が阻害されたことにより,対人関係や社会生活上の支障が生じている症状を指します。パーソナリティ障害というカテゴリーの中にも,たくさんの種類がありますが,双極性障害と特に混同されやすいのが,「境界性」と「自己愛性」のパーソナリティ障害です。

DSM-5という精神医学の診断基準では,パーソナリティ障害はA・B・Cの群に分類されており,「境界性」と「自己愛性」はどちらもB群に入っています。B群は,主に情緒面の不安定さという共通性でまとめられているので,気分の波も大きい場合が多いのですが,「境界性」と「自己愛性」は特に対人関係における認知の不安定さから,気分の浮き沈みにつながりやすいと言えます。

医療機関やカウンセリング機関に訪れる場合も,抑うつ気分などが主訴になることがほとんどなので,パーソナリティ障害が見逃されがちです。次回からは,「境界性」と「自己愛性」それぞれのパーソナリティ障害について,取り上げていきたいと思います。