双極性障害を深層心理学的にみる(3)

双極性障害の気分の波を乗りこなす「波乗り」というのは,気分の波を全体的に俯瞰できる感覚を身につけることが重要です。本来はその感覚をもっているはずなのですが,気分の波が不安定になったことで見失っているので,取り戻すという方が適切ですね。

前回も,気分の波の振幅の中心に自分の基準を置くと書きましたが,うつ状態に対する不安や恐怖が強かったり,防衛機制の「否認」が働いていると,なかなか難しくなります。このため,カウンセリングの初期にはそれらをやわらげることが優先されます。振幅の中心というのは,気分の波を安定させる心の軸でもあるので,落ちついたらその振幅の中心を見つけていくように進めます。

気分の波は,振幅の中心軸にいることで,その方向や傾きの度合いがわかりますから,それに合わせて波に乗っていくイメージです。今,自分の気分の波がどうなっているのかがわからなければ,その波に振り回されてしまいます。うつ状態の極に向かうときにも,その波に乗っていけば,自然な波の流れでその極を越えて,早く中心側に戻っていく上向きの波に乗れるようになります。

うつ状態の極に向かう下向きの波の時期には,自分と向き合ったり今後の方向性を見直したりして,上向きの波の時に落ちついて最大限のパフォーマンスを発揮する準備ができます。下向きの波にうまく乗れてこそ,上向きの波にもうまく乗れるようになれます。