トラウマ(心的外傷)のカウンセリング(2)

トラウマのような心の傷は,命そのものやその人の存在をおびやかすため,心身の強い緊張状態に置かれます。それが慢性化していくと,緊張状態が普通になってしまい,外傷体験を忘れていても「気が休まらない」という感覚は絶えずあるのがほとんどです。

トラウマの治療法のひとつとして知られるEMDR(眼球運動による脱感作と再処理療法)では,眼球運動による脱感作とあるように眼球運動を通して自律神経の副交感神経に働きかけるものです。脱感作というのは,トラウマに伴う緊張状態による神経系の興奮をしずめることを意味しており,トラウマに類似した刺激による反応を緩和し,結果的にトラウマによる心身の反応を改善します。

同様の機序は,自律訓練法を用いることでも可能です。自律訓練法は,身体感覚を用いた脱感作法でもあり,EMDRでは眼球運動を用い,自律訓練法では身体感覚を用いるという点で異なりますが,トラウマに伴う緊張状態に対して自律神経系に働きかける点では共通しています。当オフィスでは,自律訓練法をベースに,身体的アプローチによる無意識レベルへの働きかけを行っています。

自律訓練法は,やり方を覚えれば自分でも身につけられますし,日常でも起こりうるトラウマの反応に対処しやすくなります。また,カウンセリングに来室された時にも,習慣的に身につけておくことでよりスムーズに進めることが可能になる点が特徴です。