ポリヴェーガル理論の基礎(5)

ポリヴェーガル理論の基礎について書いてきましたが,今回でまとめとしたいと思います。ポリヴェーガルの特徴は,副交感神経系の働きを2つの迷走神経に分類したこと,そして,交感神経系もいずれかの迷走神経と連動しその反応が二分されるという点です。

通常のストレスに対して,交感神経系は「闘争/逃走反応」で対応しますが,「背側迷走神経」は,命や存在を脅かすようなトラウマ的な脅威に反応して働き,「不動状態」で対応します。これが,ポリヴェーガル理論でシャットダウンと呼ぶ「解離」を引き起こし,発達早期であれば自閉症等の発達障害,一定の自我形成がされた後ではPTSDという形で,持続的な不全状態につながります。

一方,「腹側迷走神経」は安全安心な状態で活性化され,「社会交流システム」が発動します。しかし,「背側迷走神経」が反応する何らかの脅威を感じている状態では「社会交流システム」が抑制され,他者との交流に困難が生生じます。治療論としては,低周波の音などの動物的な危険の察知につながる刺激を避け,安全安心を感じる状況で「あそび」による神経エクササイズを行います。

カウンセリング/心理療法においては,安全安心を感じる場の設定と,ラポール(信頼関係)の形成が重要と言えます。その上で,対話による「社会交流システム」の活性化を促します。その際には,大人でもどこか「あそび」の感覚があることが大切でしょう。