トラウマ(心的外傷)のカウンセリング(1)

トラウマという用語が一般的になったのは,平成の時代を通してという感じがありますが,精神分析学をはじめとする深層心理学では,過去に心の傷を受けた外傷体験が,現在の精神症状やパーソナリティ傾向に強い影響を及ぼしているという考え方になります。

トラウマは「心的外傷」と訳されますが,心の傷は体の傷のように短期間で自然に治るわけではなく,長期間にわたって影響を及ぼしますので,質が異なるといえます。もちろん,トラウマが治らないというわけではなく,カウンセリング/心理療法によって癒されていくことが充分に可能です。ただ,やみくもにトラウマを掘り起こそうとするアプローチは危険を伴うので注意が必要です。

トラウマは,一般的には気軽に使われている感がありますが,本来的には無意識レベルのもので,精神症状やパーソナリティ傾向の背後に隠れています。無意識レベルに眠っているトラウマに触れると,より重篤な症状が現れる場合があります。自覚できているトラウマは比較的軽いもので,もちろん苦痛はありますが,日常生活をおびやかすことは少ないか,一過性の場合がほとんどです。

難治性のうつ病の背景にもトラウマが潜んでいる場合があり,長期的なカウンセリングが必要になります。症状が出ているということはトラウマを扱える時期にきているといえるので,トラウマと向き合っていくために,安心できる信頼関係が重要となります。