ポリヴェーガル理論の基礎(4)

ポリヴェーガル理論では,自律神経系がストレス状況などの危険を感じると「交感神経」が闘争/逃走反応を起こしますが,安全を感じると「腹側迷走神経」が働いて社会交流システムが活性化され,「交感神経」は別の働きをするという新しい視点を示します。

安全な状況における「交感神経」の別の働きは「あそび」と呼ばれ,他者との交流に向けられるようになります。動物同士のじゃれ合いなどを例として挙げており,人間では子ども同士の遊びから大人のスポーツまで,一緒に楽しむような活動がそれに当たります。「交感神経」は可動化が主な働きであり,危険な状況での攻撃性は社会交流システムによって抑制され,楽しむ形になります。

反対に,強いトラウマによって危険を絶えず感じている状態では「背側迷走神経」が活性化されているため,副交感神経系のもう一方の「腹側迷走神経」は働かず,「交感神経」は小さな刺激に対しても闘争/逃走反応を起こします。ポリヴェーガル理論では,自閉症の子が他者交流的な「あそび」が難しい点や,刺激に対しての過敏さをもつことなどを,このメカニズムで説明しています。

PTSDの症状も強いトラウマが引き起こすことから,自律神経の反応としては同様です。治療論として,安全と感じられる環境で少しずつ社会交流システムを活性化させ,「あそび」で神経エクササイズを行い危険への反応を和らげることが重視されています。