トラウマ(心的外傷)のカウンセリング(3)

トラウマと呼ばれるレベルの心の傷は,心身の強い緊張状態を引き起こし常態化していくという点を前回書きました。身体的な緊張状態は,身体感覚としてのおびえるような感じやそこにいられないような落ちつかなさを引き起こし,日常生活をおびやかします。

これは,生存をおびやかすような状況を逃げだしたいのに逃げられず,耐えるしかないという心理状態を表す身体感覚ですが,子どもの頃などの過去であっても,その記憶が自律神経のバランスを崩し続けていきます。症状としては,心身症という形で様々な身体症状を引き起こしますが,体の症状に焦点が当たると,トラウマという本質的な要因に気づかずに苦しみが続くことも多いです。

身体感覚からアプローチする,フォーカシングやプロセスワークなどによって,身体感覚から深層心理につながっていくと,その身体症状の背景にあるトラウマに触れることがあります。トラウマは,何らかの「危険」という感覚が伴っていますが,カウンセリングを通して「安全」な感覚をもてるようにして,過去の「危険」ではなく,今ここにある「安全」を感じられることが重要です。

トラウマに対する心身の反応は,自分の生存を守るために本能的に備わっている自然な働きです。その反応が続いて苦しい状態ではあるのですが,その呪縛から解放されると,その働きを現在の状況で自分を守ったり自分らしさを取り戻す気づきにつながります。