ポリヴェーガル理論の基礎(2)

ポリヴェーガル理論では,自律神経系を系統発生的に進化の古い順から,「背側迷走神経」「交感神経」「腹側迷走神経」に分類しています。副交感神経系の働きを大きく2つの迷走神経で区別しており,トラウマによる自律神経の反応を中心に論じています。

「背側迷走神経」は系統発生的に古く,進化論的には爬虫類に見られるとのことですが,「交感神経」による闘争/逃走反応では対処できない生命や存在をおびやかす経験に反応します。その反応は「不動状態」と呼ばれ,生体としての機能的にはシャットダウンを引き起こします。この反応により,トラウマによる人間の症状として「解離」などの心理的反応が無意識レベルで起こります。

「腹側迷走神経」は系統発生的に新しく,哺乳類から見られるとのことです。これは,ポリヴェーガル理論で「社会交流システム」と呼ばれる,出生後の愛着形成に関わる重要な働きを担っています。「社会交流システム」は,安全安心を感じられる環境でないと発動せず,何らかの危険を感じている状況では抑制されるため,愛着や対人交流性の発達に大きな影響を及ぼすとされています。

何らかの危険を感じている状況では,「交感神経」が優位に働くために「腹側迷走神経」は抑制されます。「交感神経」は従来通り闘争/逃走反応に関連しますが,活動するための神経系でもあり,「腹側迷走神経」とのバランスの重要性が強調されています。