ポリヴェーガル理論の基礎(3)

ポリヴェーガル理論における自律神経系の中で,トラウマなどのストレス状況に対しての反応は,まず「交感神経」による闘争/逃走反応の働きで対処しようとし,それで対処できない場合には「背側迷走神経」が働いて不動状態/シャットダウンを起こします。

「腹側迷走神経」の社会交流システムは,安全安心と感じられる状況でなければ「交感神経」に抑制されて働かなくなります。これがトラウマのレベルになると,社会交流システムの働きが常に抑制されるため,自閉症スペクトラム障害のような社会的な交流の困難につながるとされています。自律神経的には常に危険を感じている状態のため,生き残るための対処としての症状と言えます。

危険と感じる神経系の刺激として,ポリヴェーガル理論では音を重視しています。動物的なレベルでは「ウー」といった低い周波数のうなり声であり,人間では特に怒鳴り声などの低い音となります。男性の方が声が低いため,より危険を感じやすいと言えますが,女性でも怒鳴ったり機嫌が悪い声は低い音の響きが多くなります。また,電子機器などの低周波の音も危険を感じるものです。

このため,症状等の改善のためには自律神経系が安全安心と感じられる環境が必要とされていて,韻律に富んだ声が重要視されています。高い周波数の声による,母親が赤ちゃんに語りかけるようなものや,主に女性ヴォーカルによる歌などが推奨されています。