うつ病のセルフケアと予防(2)

抑うつの方向に気分が落ちていくとき,「気分が沈む」という表現をしますが,身体感覚としても重くなり,水に沈むような感覚に近いように思えます。こういう状態から早く抜け出したいと思うのは自然な気持ちですが,かえって逆効果になりやすいのです。

「気分が沈む」感覚を,水に沈むというメタファーを使ってイメージするとわかりやすいと思います。抑うつから早く抜け出そうともがくのは,溺れそうになって手足をバタバタさせてしまうのと似ています。もがけばもがくほど,体は沈んでいってしまいますよね。心のエネルギーが低下している時に,抜け出そうといろいろもがいてしまうと,残り少ないエネルギーが枯渇してしまいます。

体には本来,浮力があるので力を抜けば水に浮くことができます。心にも本来,浮かび上がる力(自然治癒力)があるのです。そうは言っても,泳げない人は力を抜けばいいとわかっていても,恐怖心から力が入ってしまい沈んでいきます。浮いた状態を体験することで,力の抜き方もつかめてきます。うつ病でも,浮かび上がる感覚を体験することで,心の安定がつかめるようになります。

うつ状態は,心が溺れそうになっているイメージに近く,心の力の抜き方がわかれば,うつ病まで悪化させなくて済みます。心の力が抜ければ,気分が楽になって「心が軽くなる」ので,カウンセリングを通して,心の力を抜けるようにサポートしていきます。