発達障害の特性とうつ病などの精神疾患(2)

発達障害,特に自閉症スペクトラム障害における抑うつ状態というのは,通常のうつ病とは少し異なる側面があります。本質的には人との関わりを求めているのですが,その特性からコミュニケーションがうまくとれず,あきらめてしまっている状態と言えます。

うつ病になるメカニズムとして挙げられている中に「学習性無力感」がありますが,何度やってみても上手くいかない経験が重なることで,頑張る気力も尽きてしまったような状態を指します。一般的には,うつ病になる過程で様々な感情が起こるのでそう単純ではないのですが,自閉症スペクトラム障害では,心理学における「学習」のメカニズムが比較的シンプルに働くと考えられます。

心理学における「学習」というのは,刺激に対する反応によって形成される行動という意味合いになります。カウンセリングにおいても,感情にアクセスすること自体が苦手なため,深層心理学的なアプローチを普通に適用しようとしても難しい場合が多いです。同じパターンの繰り返しでうまくいかなくなっているのに気づき,違うパターンを見つけたりする心理教育的な方向になります。

注意欠如・多動性障害や限局性学習障害においても,発達障害という自分の特性に気づかずにうまくいかない経験を重ねていることが多いので,努力が足りないとかではなく,特性であることを理解することで気持ちが楽になるという方も多くいらっしゃいます。