パーソナリティ障害と双極性障害(3)

双極性障害に似た気分の浮き沈みをもつ人の中に,パーソナリティ障害をもつ人が含まれます。カウンセリングでも,初期には判別が難しいことが多いですが,経過をみていくと異なる特徴が見えてきます。今回は,「自己愛性パーソナリティ障害」を挙げます。

「自己愛性パーソナリティ障害」をもつ人も,対人関係に伴う気分の浮き沈みが大きいので,双極性障害との判別が難しいことが多くあります。自己イメージが肥大化しやすい点でも共通性が見られるので,判別は境界性パーソナリティ障害よりも難しいと思います。気分の変化を経過で見ていっても,波として感じられるところも似ていて,感覚的には少し違うのですが表現しづらいです。

違いとしては,ストレス状況における気分の落ち込みの様子と,それに伴う対人イメージのありようが特徴的です。自己愛性パーソナリティ障害の場合,相手に対する認知が他罰的で,相手のせいで自分が不利益を被っているという被害的な訴えが多くなります。双極性障害も,自己愛の傷つきがあると似ている場合がありますが,内省する力があり自分を改善しようとする感じがあります。

自己愛性パーソナリティ障害も,カウンセラー/セラピストに対して不安定な対人関係イメージをもちますが,信頼関係を築きづらい点で困難例の割合が多いと言えます。内省する力が乏しいので,なかなかカウンセリングが深まらないという経験をしがちです。