家族システムに起因するうつ病(1)

うつ病に家族関係の要因がからみあっていることがあり,家族関係の中でうつ病がある種の役割を果たしているような場合,なかなか改善しないケースがあります。このような場合,クライエント(相談者)と家族との関係性をていねいに扱う必要があります。

家族療法の実践から生まれたシステム論は,家族関係をひもとく上でとても有用だと感じています。家族全体をひとつの有機体のようなシステムとして捉え,そのシステムに生じている歪みが家族の主に弱い立場の人に表れるという考え方です。多くは,子どもに表れて不登校やひきこもりなどにつながりますが,その構造が大人になっても維持されると,うつ病という形でも表れてきます。

例えば,疾病利得と呼ばれる,病気であることが本人にとって心理的な渇望を満たすということがあります。うつ病であることで心配されたりやさしくされることが,本人がケアされたい渇望を満たしていると,うつ病が治ることが弊害になるため,なかなかよくなりません。その背景に,ケアすることが自分の存在意義になってしまっている家族がいる場合,共依存のようになりがちです。

子どもの心理的な成長が後れる要因として,親の過干渉がよく見られますが,子どもが成長して自分でできるようになると,親の存在意義が無意識に脅かされるのです。そういうシステム構造の中では,子どもがケアされる側でいることが無意識に強いられます。