不安障害のカウンセリング(1)

何らかの強い不安によって,日常生活に支障をきたすものを総称して「不安障害」と呼びます。その中には,人に対する不安が中心にある「社会不安障害」や,場面や状況に対する不安が中心にある「パニック障害」が含まれており,症状は多岐にわたります。

「不安障害」の中には,「広場恐怖症」といった形で「恐怖」という用語も含まれますが,「恐怖」は対象が概ね特定できるものを指します。一般的に,高所恐怖症とよく言われますが,高い場所という特定できるものに不安の対象が決まっているので「恐怖」と呼びます。それに対して,特定できない漠然としたものに対する強い心配を「不安」と呼んでいて,基本的に区別されています。

不安障害のカウンセリングで最初にお伝えするのは,「不安」や「恐怖」は命を守るために本能的に備わっているものだということです。心のバランスがとれなくなって,不安や恐怖を感じる感度が上がっている状態です。高所恐怖症を挙げましたが,これは診断名には入っていません。高いところから落ちたら命に危険が及ぶので,そういう状況に恐怖を感じるのは自然な反応だからです。

うつ病と不安障害が併発することも知られていますが,どちらも神経伝達物質のセロトニンの関与が指摘されているので,うつ病の悪化で不安障害の症状が出てきたり,その逆も起こりやすいと考えられます。いずれにしても,早めのカウンセリングが有効です。