発達障害の特性とうつ病などの精神疾患(3)

発達障害という概念は,今ではずいぶん広まってきて,子どもの時期から指摘されて支援を受けたり,周囲の理解も得られたりします。しかし,発達障害という概念がなかった時代に成長してきた大人は,特性の理解もないまま生きづらさを抱えやすくなります。

発達障害という概念の広がりは,理解不足による偏見や差別を受けるといった,ある種の弊害もあるのですが,漠然とした生きづらさを子どもの時から感じ続けることになり,慢性的な抑うつ状態とも言えます。その特性から周囲とうまく関わりをもてず,いじめに遭ったり孤立から不登校やひきこもりになったりした経験をもつ人も多いので,うつ病になりやすい要素をもっているのです。

ただし,前回も書きましたが,自閉症スペクトラム障害やその傾向が強い人のうつ病というのは,典型的な臨床像と異なる側面があります。例えば,抑うつ気分を訴えているのに,自分の趣味の活動をする元気はあるという,ディスチミア親和型と呼ばれるタイプや,環境に対するストレス反応としての感情にうまくアクセスできず,身体症状中心になる仮面うつ病というタイプがあります。

環境からの刺激に敏感に反応しやすく,それ自体がストレスになっていることも多いので,職場などの環境を整える環境調整が奏功することもよくあります。環境調整は,物理的なことも大切ですが,特性に応じた周囲の理解を得ていくことも重要になります。