家族システムに起因するうつ病(2)

前回書いたように,難治性のうつ病の背景に家族システムが強く影響しているケースがあります。うつ病は,心理的に見ると心的エネルギーの枯渇が大きな要因ですが,家族システムがこの心的エネルギーを剥奪するような構造になっている場合がよくあります。

子どもは,親の愛情という心的エネルギーが注がれることで心が成長していきます。親の心的エネルギーが子どもでなく他の方に向けられるだけでも,子どもの心的エネルギーは枯渇していき,不登校などにつながります。子どもに,親の自尊心を満たすために利用するような関わりをすると,子どもの心的エネルギーが搾取され,子どもの心が歪んだ形で成長していく危険性が高まります。

家族システムの歪みは,大人になっても心の磁場のように影響します。同居のままの方がシステム構造の中にとどまるので影響は強いですが,独り暮らしなどでも心の磁場としては残ります。そうすると,例えばその家族の中で「我慢する」という方向で生き残り戦略を身につけると,他の場所や人間関係でも「我慢する」がパターン化され,うつ病になりやすい素地が形成されていきます。

このような,家族システムに起因する心の磁場のありように一緒に気づいていくことは,カウンセリング/心理療法で有用です。心の磁場に,パートナーや新しい家族が影響されることも多いので,カップルカウンセリングが勧められるケースも結構あります。